予 防
日本では1956年以降は発生がありませんが、世界中では毎年5万5千人の人と数十万頭の動物が亡くなっています。
日本は島国ですが、検疫を逃れた動物が日本に入ってきていることも事実であり、新たな狂犬病の発生がないとは決して言いきれません。狂犬病に感染し発症すると100%死亡する恐ろしい人獣共通感染症です。
この病気を予防するために、日本には「狂犬病予防法」という法律があり、生後91日以上の犬を飼育した場合には1ヶ月以内に犬の登録と狂犬病予防注射を受けさせることが義務付けられています。
生体は、細菌やウイルスに感染すると、その病原体に対する抵抗力(免疫)が生まれます。その原理を応用し、病原体の毒性を弱めたり無毒化したものを体内に人為的に入れて病原体に対する抵抗力を付けるために行うのが予防接種です(狂犬病の予防接種も同じです)。その感染症の予防のために使用する薬液をワクチンと呼び、複数の病気を一つの薬剤にしたものを混合ワクチンと呼んでいます。
現在予防できるワクチンの種類には次のものがあります。
(1) ジステンパーウイルス (2)犬パルボウイルス (3)犬アデノウイルス2型
(4)犬パラインフルエンザウイルス (5)犬インフルエンザウイルス (6)レプトスピラ
フィラリア症は、フィラリアに感染したイヌ科の動物の血を蚊が吸血することで、蚊の体内にミクロフィラリア(フィラリアの幼虫)が入り2週間かけて感染力を持つ感染子虫に成長します。そして、その蚊が他のイヌ科の動物を吸血する時に刺口から感染子虫が体内に入り感染を起こします。心臓に到達した感染子虫は成長して成虫となりミクロフィラリアを産出しはじめます。一度犬がフィラリアに感染すると治療は難しいため確実に予防することが重要です。
フィラリア予防薬をきちんと服用すれば100%近くは予防できますが、注意してほしいのは、フィラリア予防薬は感染を予防する薬ではなく蚊によって動物の体内に入った感染子虫が心臓に達するまでに駆虫する薬です。(心臓に達するまでに1〜2ヶ月かかると言われています)
そのことを忘れないでください。
つまり蚊の出始めて1ヶ月後から投薬を始めて、蚊がいなくなってから1ヶ月後に最後の投薬をしなければ効果は期待できません。
そのため、投薬期間は出来るだけ30日を守った方が効果的と言われます。
また、前年の投薬が確実に行えたかどうかをチェックするためのフィラリア感染検査(血液検査)は、毎年投薬前には必ず受けてください。
フィラリアに感染したワンちゃんに予防薬を投薬すると、重大な事故に繋がることがあります。
蚊は13℃で活動し15℃で吸血すると言われます。最近は地球の温暖化で早くから蚊が飛び始め遅い時期まで見られるようになりました。また、越冬する蚊がいるとさえ言われています。早い時期に投薬を開始し、できるだけ遅くまで投薬することが大切なのです。
予防の方法には、注射薬、錠剤、粉薬、チュアブル剤(味の付いた食べる薬)、滴下剤などがあります。
また、フィラリア予防とノミ・ダニ予防を1剤で同時に予防できるチュアブル剤もあります。
ノミには、「イヌノミ」や「ネコノミ」などたくさんの種類のノミがいます。
犬につくノミは、70〜80%がネコノミであると言われ、ネコノミは人間を吸血します。ノミは、「ノミが湧く」という言葉がありますが、実際に湧くように増えていきます。1匹の雌ノミが付くと吸血をしながら1日に30〜50個の卵を産むと言われ、梅雨時期から夏にかけて、条件が良い時には1週間で成虫になると言われます。野良猫などについていたノミが人間について家に入ることで、外に散歩も行かないワンちゃんにもノミがつく可能性があります。室外だけではなく室内のワンちゃんも予防が必要です。
ダニは今まで「バベシア」という病気を媒介すると言われていましたが、最近ではSFTS(重症熱性血小板減少症候群)というウイルスを持っているダニがいることもわかってきました。人間がこのウイルスを持っているダニに吸血されると死亡率30%とも言われています。またワンちゃんがこのウイルスを持ったダニに吸血されると人間と同様に発症し、そのワンちゃんからも感染することもわかっています。ノミやダニの予防方法には全身へのスプレー剤、首筋へのスポットオンタイプ、チュアブルタイプなどがあります。
避妊手術
避妊手術は生後6ヶ月から行うことができます。
最初の発情までに手術をしたワンちゃんの乳腺腫瘍の発生率は非常に低くなると言われています。また、避妊手術は子宮や卵巣を切除しますので性ホルモンに関連した病気の予防にもつながります。しかし、全身麻酔下での手術、術後の肥満などといったリスクもあります。
避妊の方法は手術以外にもあります。発情抑制剤の注射や発情抑制剤を浸透させた小さな器具を体に埋め込むことで発情を抑えることができますが、長期の使用により子宮蓄膿症、糖尿病などのリスクがあるとも言われます。
去勢手術
去勢手術は生後7ヶ月から行うことができます。
できるだけ子犬の時に手術をした方が問題行動(攻撃性やマウンティング行動)の予防につながるようです。
また、前立腺肥大や肛門の周りに出来る腫瘍(肛門周囲腺腫)、会陰ヘルニアなどの予防にもなるとも言われます。
しかし、避妊手術と同様に全身麻酔下での手術、術後の肥満などのリスクもあります。
病気の早期発見と術前検査
毎年、春のフィラリア予防の開始時期には、フィラリアの感染検査を実施させていただいております。その時期にご希望があれば、年1回の健康診断も併せて行うことができます。
健康診断を毎年実施することで病気の早期発見につながりますので、特に5〜7歳以上のワンちゃんにはお勧めしております。
また、尿検査、糞便検査、レントゲン検査、エコー検査などを同時に行うことも出来ますのでご相談ください。
当院では、より安全に手術を行うために術前検査をお勧めしています。 血液による健康診断と凝固検査(血が止まるかどうかの検査)、必要により画像検査も行っております。